ハンマとは?種類や用途、電動工具との違いを分かりやすく解説

ハンマとは?種類や用途、電動工具との違いを分かりやすく解説

こんにちは。パワーツールラボ運営者 TAKAです。

DIYや現場作業に興味を持ち始めると、ハンマという言葉を耳にする機会が増えますが、実際にその言葉が指す道具が何なのか、少し混乱してしまうことはありませんか。金槌やトンカチといった手工具を指すこともあれば、コンクリートを砕く電動工具を指すこともあり、その意味は場面によって異なります。

私たちが普段何気なく使っている言葉でも、いざ自分で道具を揃えようとしたり、作業に適したものを探そうとしたりすると、その種類の多さや専門用語の違いに戸惑ってしまうものです。この記事では、手工具としてのハンマーから電動工具としてのハンマまで、その違いや正しい選び方について、初心者の方にも分かりやすくお話ししていきたいと思います。

この記事でわかること
  • 「ハンマ」という言葉が指す手工具と電動工具の明確な違い
  • 金槌や玄能など手工具としてのハンマーの種類と使い分け
  • コンクリート破砕に使われる電動ハンマの特徴と選び方
  • 安全に作業を行うための基礎知識と振動障害への対策
目次

ハンマとは?手工具の種類と正しい使い方

ハンマとは?手工具の種類と正しい使い方

まずはじめに、私たちの生活に最も身近な「手工具」としてのハンマについて深掘りしていきましょう。一般的にハンマーと言えば、釘を打ったり物を叩いたりする道具をイメージしますよね。

しかし、実はその種類は非常に多岐にわたり、素材や形状によって得意とする作業が全く異なります。ここでは、DIY初心者の方がまず知っておくべき基本的な知識から、プロがこだわる選び方のポイントまでを解説します。

ハンマの基礎知識

「ハンマ」は物を叩く道具の総称です。用途に合わせて「ヘッドの素材」や「形状」を選ぶことが、作業の成功と安全への第一歩となります。

ハンマと金槌や玄能の違いと呼び分け

ハンマと金槌や玄能の違いと呼び分け

「ハンマ」「金槌(かなづち)」「玄能(げんのう)」。これらの言葉、普段の会話では同じような意味で使われがちですが、工具の世界ではそれぞれ少しずつニュアンスや定義が異なることをご存知でしょうか。言葉のルーツを紐解くと、それぞれの道具が持つ本来の役割や、日本のものづくり文化の深さが見えてきます。

呼び方の違い

  • ハンマ (Hammer):物を叩く道具全般の総称。
  • 金槌:ヘッドが金属製のハンマの日本語名称。
  • トンカチ:釘打ちの音に由来する俗称。

そして、少し専門的になるのが「玄能(げんのう)」です。これは主に日本の大工道具としての呼び名で、頭部の両端が打撃面になっているものを指します。

興味深いのはその形状で、片側の面は完全な「平面」になっており、もう片側の面はわずかに盛り上がった「曲面(凸状)」になっているのが一般的です。これには明確な理由があります。

STEP
平面で打つ

まず「平面」の方を使い、釘を力強く打ち込んでいきます。

STEP
曲面で仕上げる(木殺し)

釘の頭が木材に近づいてきたら、「曲面」の方に持ち替えて最後の一撃を加えます。これにより、木材に傷をつけずに釘頭を沈めることができます。

この「木殺し」を行うと、後からパテ埋めや塗装をした際に釘の頭が目立たなくなり、仕上がりが格段に美しくなります。また、木材の繊維を圧縮することで釘の保持力が高まるという効果もあります。

このように、用途や形状、そして文化的背景によって呼び方が使い分けられています。DIYで木工をするなら繊細な作業ができる「玄能」、鉄工や解体ならパワー重視の「ハンマー」と呼ぶことが多いかなと思います。道具の名前を知ることは、その道具のルーツや正しい使い方を理解する第一歩です。ホームセンターの売り場でも、ラベルにどう書かれているか注目してみると新しい発見があるかもしれません。もしこれから本格的な玄能を選ぶなら、オーエッチ工業などの信頼できるメーカーの製品をチェックしてみると、その造りの良さを実感できるはずです。

片手ハンマーや両口ハンマーの種類

片手ハンマーや両口ハンマーの種類

ハンマと一口に言っても、その種類は本当に豊富です。ここでは、DIYや一般的な作業でよく使われる代表的な種類について解説します。それぞれの形状には「なぜその形なのか」という理由があり、適材適所で使い分けることが作業効率アップの鍵となります。

代表的なハンマーの種類

  • 片手ハンマー:鉄工用。片面が平ら、もう片面が球状(丸頭)。リベット打ちや板金加工に。
  • 両口ハンマー(スレッジハンマー):解体・土木用。重量があり破壊力が高い。
  • ネイルハンマー:西洋金槌。片面が釘抜きになっている。ツーバイフォー工法などに便利。

まず、最もポピュラーなのが「片手ハンマー」です。これは鉄工用ハンマーとも呼ばれ、頭部の一方が平らで、もう一方が球状(丸頭)になっているのが特徴です。平らな面で釘打ちやピンの打ち込みを行い、丸い面(ボールペイン)は鉄板を叩いて曲面を作ったり、リベットをかしめたり(叩き潰して接合する)するのに使われます。自動車の板金修理や金属加工の工場などでよく見かけるタイプですね。家庭用としても、家具の組み立てやちょっとした金属製品の修正など、万能選手として活躍してくれます。KTCなどの工具メーカーからも販売されており、グリップが握りやすく設計されたモデルなどは、長時間使っても手が痛くなりにくいのでおすすめです。

次に、映画や漫画などで豪快に壁を壊すシーンで使われるような大きなハンマー、あれは「両口ハンマー」や「スレッジハンマー」と呼ばれます。重量があり、長い柄がついているため、両手で振り下ろすことで強力な打撃力を生み出すことができます。コンクリートの解体や、キャンプでの大型ペグの打ち込み、杭打ちなど、パワーが必要な土木作業には欠かせない存在です。

そして、DIY好きの方にぜひ持っておいてほしいのが「ネイルハンマー(西洋金槌)」です。片側が打撃面、もう片側が二股に分かれた釘抜き(クロー)になっているタイプで、ツーバイフォー工法などの大工仕事に非常に便利です。長い釘を打ち込むパワーがあり、もし間違って打ってしまっても、その場ですぐに釘を抜くことができます。釘抜き部分はテコの原理を利用して軽い力で抜けるように設計されており、玄能よりもラフに使われることが多く、解体作業や型枠工事でも重宝します。

点検用ハンマーの豆知識

テストハンマーは打音検査に使われる繊細な道具です。叩いた時の音の響き(高い音か低い音か、濁っているか)で、トンネルの壁の中の空洞や、ボルトの緩みを聞き分けるんですよ。プロの検査員は、この「音」だけで構造物の健康状態を診断します。

鉄やゴムなどヘッド素材の特性

鉄やゴムなどヘッド素材の特性

ハンマを選ぶ際、形状と同じくらい重要なのが「ヘッド(頭部)の素材」です。叩く対象物(ワーク)を傷つけてはいけないのか、それとも強い衝撃を与えて変形させたいのかによって、適切な素材は全く異なります。間違った素材を選ぶと、せっかくの作品を台無しにしてしまったり、道具自体をすぐに壊してしまったりする原因になります。

スクロールできます
素材 主な特徴 適した作業
金属(鉄) 硬度が高く、打撃力が最強。耐久性も高い。 釘打ち、解体、金属加工、はつり作業
ゴム 弾力があり、対象を傷つけない。反発力が強い。 木製家具の組立、レンガ・タイルの位置調整
樹脂(プラ) 金属とゴムの中間。適度な硬さで傷つきにくい。 精密機械の組立、金型調整、板金作業
銅・真鍮 鉄より柔らかく、火花が出ない。重さがある。 防爆エリアでの作業、シャフトやピンの打ち込み

最も一般的な「金属製(鉄製)」は、強度が高く、釘打ちや金属の加工、はつり作業など、強い打撃力が必要な場面に適しています。しかし、叩く相手も金属の場合、相手を傷つけたり変形させたりしてしまう可能性があります。また、引火性のガスがある場所など、火花が出ると危険な場所では絶対に使用してはいけません。

そこで活躍するのが「ゴムハンマー」です。黒や白のゴムでできたヘッドを持ち、木製家具の組み立てやタイルの位置調整など、対象物を傷つけずに力を伝えたい場面で重宝します。特に白ゴムは、叩いた跡(カーボンによる黒い汚れ)が残りにくいので、白い壁紙の近くや内装作業、完成品に近い家具の調整などでおすすめです。ただし、ゴム特有の反発力(リバウンド)が強いため、強く叩くとハンマーが跳ね返ってくる点には注意が必要です。

ゴムと金属の中間的な役割を果たすのが「プラスチックハンマー(プラハン)」です。ヘッドが硬質の樹脂でできており、金属ほど硬くはありませんが、ゴムよりもしっかりとした打撃感があります。機械部品の組み立てや、金型の微調整など、精密な作業でよく使われます。多くの製品はヘッド部分がネジ式で交換可能になっており、摩耗したらヘッドだけを安価に交換できるため経済的です。例えばKTC コンビハンマ UD7-10のように、片側が鉄、もう片側が樹脂というハイブリッドな製品もあり、1本で2役をこなせるため工具箱のスペース節約にもなります。

プロのおすすめ:ショックレスハンマー

さらに、プロの現場で愛用者が多いのが「ショックレスハンマー(無反動ハンマー)」です。ヘッド内部に「流動する重り(多数のディスクや鉄球)」が入っており、打撃した瞬間に重りが遅れて移動することで、打撃時の反動(衝撃)を打ち消す仕組みになっています。これを使うと腕への負担がグッと減り、確実な打撃力が伝わるので、長時間の作業でも疲れにくいんですよ。PBスイスツールズなどの高級ブランドから出ている製品は、その打ち心地の良さから「一度使うと戻れない」と言われるほどです。

DIYや現場で役立つサイズの選び方

DIYや現場で役立つサイズの選び方

ハンマー売り場に行くと、同じ種類のハンマーでも大小さまざまなサイズが並んでいて、どれを選べばいいか迷ってしまった経験はありませんか?実は、ハンマーのサイズ選びは「大は小を兼ねない」非常に繊細なポイントなんです。大きすぎればコントロールできず、小さすぎれば作業が進まない、このバランスを見極める必要があります。

ハンマーのサイズは、一般的にヘッドの「重量」で表されます。日本では伝統的に「匁(もんめ)」という単位が使われてきましたが、現在は「g(グラム)」表記が主流です。また、海外ブランドの製品では「ポンド(lb)」や「オンス(oz)」という単位が使われます。

DIYの標準サイズ

DIYでの一般的な釘打ち用(玄能)であれば、サイズとしては300g〜450g程度(80匁〜100匁くらい)が扱いやすい標準的なサイズと言われています。これを基準に、自分が力に自信があるなら少し重め、細かい作業が多いなら軽めを選ぶと良いでしょう。小さな釘を打つのに巨大なハンマーを使うのは、針の穴に太い糸を通すようなもので、作業性が著しく低下します。

選ぶ際の最大の基準は、「自分の筋力」と「対象物の大きさ」のバランスです。
「重いハンマーの方が、一撃で深く釘が入るから楽だろう」と考える方も多いのですが、これは半分正解で半分間違いです。確かに物理的な運動エネルギーは質量に比例して大きくなりますが、自分の腕力に見合わない重すぎるハンマーを使うと、ヘッドの軌道が安定しません。その結果、釘を斜めに叩いて曲げてしまったり、狙った場所を外して自分の指を叩いてしまったりするリスクが高まります。また、手首や肘への負担が大きく、すぐに疲れて作業効率が落ちてしまうこともあります。

注意点:軽すぎてもNG

逆に、軽すぎるハンマーで大きな釘(例えば90mm以上の釘)を打とうとすると、何度叩いても入っていかず、木材の表面を何度も叩いてボコボコにしてしまう原因になります。選び方のコツは、「対象物に対して、無理なく振り切れる範囲で少し重めのもの」を選ぶことです。

安全に作業するための正しい使い方

安全に作業するための正しい使い方

どんなに便利な道具でも、使い方を誤れば大きな怪我につながるのが工具の怖いところです。ハンマーは単純な構造ですが、打撃による破片の飛散や、ヘッドのすっぽ抜けなど、特有の危険が潜んでいます。安全に作業を行うために、必ず守ってほしいポイントを具体的なリスクとともに解説します。

STEP
使用前の点検

ヘッドと柄の接続部分にガタつきや緩みがないか確認します。特に冬場は木が痩せて緩みやすいため注意が必要です。

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保護具の着用

破片の飛散から目を守るため、必ず保護メガネを着用します。山本光学などの曇りにくい製品がおすすめです。

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周囲の確認

ハンマーを振り上げる範囲に人がいないか、必ず後方を確認してから作業を開始します。

そして、意外と知らないのが「正しい握り位置」です。柄の根元(ヘッドに近い部分)を握ると、細かいコントロールはしやすいですが、打撃力は弱くなります。逆に、柄の端(お尻の方)を握ると、回転半径が大きくなり遠心力で強い力が加わります。

釘打ちの基本動作は、最初は柄を短く持ってトントンと優しく叩いて釘を自立させ(仮打ち)、釘が安定したら柄を長く持ち直して、肘を支点にしっかりと打ち込む(本打ち)、という流れです。このように握り位置を使い分けるのが上達のコツであり、無駄な力を使わずに安全に作業する秘訣です。

危険:ハンマー同士を叩かない

硬いもの同士(焼き入れされたハンマーの面同士や、ハンマーで別のハンマーを叩く行為)を強く叩き合わせるのは絶対にやめましょう。過度な衝撃で金属が欠け、その破片が銃弾のような速度で飛散し、目や体に深く刺さる危険性が非常に高いです。

電動工具のハンマとは?特徴とはつり作業

電動工具のハンマとは?特徴とはつり作業

さて、ここからは「電動工具」としてのハンマについて解説していきます。建設現場やリフォーム現場、道路工事などで「ガガガガッ!」と大きな音を立ててコンクリートを砕いている機械、あれがまさに電動ハンマです。

電動ハンマの定義

強力な打撃機構によってコンクリート、石材、アスファルトなどを破壊・切削(はつり)するための専用工具。回転機能は持たず、打撃のみを行います。

手工具とは比べ物にならない圧倒的なパワーを持つこの機械について、その特徴やメカニズム、そして選び方を詳しく見ていきましょう。

コンクリート破砕を行うはつり工具

コンクリート破砕を行うはつり工具

電動工具における「ハンマ(Electric Hammer)」とは、強力な打撃機構によってコンクリート、石材、アスファルトなどを破壊・切削するための専用工具です。この破壊や切削作業のことを、建設業界の専門用語で「はつり(斫り)」と呼びます。もしかすると一般的には「電動ハンマー」と語尾を伸ばして呼ぶ方が多いかもしれませんが、メーカーのカタログやプロの現場では単に「ハンマ」と呼ばれることが多いですね。

主な用途

  • 解体作業:コンクリートの壁や床、ブロック塀を壊す。
  • 溝掘り:水道管やガス管を埋設するために、コンクリート床の一部を帯状に削る。
  • ハガシ作業:リフォーム時に、古いタイルや床材、接着剤を綺麗に剥がす。
  • 転圧作業:先端に「ランマー」と呼ばれるプレートを付け、土や砂利を突き固める。

この工具の最大の特徴は、内部に搭載された「打撃機構」にあります。モーターの高速な回転運動を、クランクやピストンを使って往復運動に変換し、シリンダー内の空気を圧縮します。この圧縮空気が「空気バネ」のような役割を果たし、ストライカー(撃鉄)を加速させて先端ビット(ブルポイントやチゼルなど)の軸を叩くのです。

手で玄能を振ってコンクリートを砕こうとすると大変な労力が必要ですが、電動ハンマは毎分1,000回〜3,000回もの打撃を繰り出します。プロ向けの大型機では、ヒルティのTE 3000-AVRのように、床の破砕に特化した30kgクラスの強力なモデルも存在し、道路工事などで活躍しています。

ハンマドリルとの違いと見分け方

ハンマドリルとの違いと見分け方

電動工具の中でも特に間違いやすく、購入時にトラブルになりやすいのが、「ハンマ」と「ハンマドリル」の違いです。名前が非常に似ているため混同されがちですが、機能と用途には決定的な違いがあります。ここを正しく理解していないと、せっかく数万円もする高い工具を買っても「やりたい作業が全くできない!」という事態になりかねませんので、しっかりと整理しておきましょう。

工具名 動作モード できること できないこと
ハンマ 打撃のみ はつり、破砕、地固め 穴あけ(回転しないため)
ハンマドリル 回転+打撃
(打撃のみ)
コンクリート穴あけ
(軽度のはつり)
金属・木材への精密な穴あけ
振動ドリル 回転+振動
(回転のみ)
小径の穴あけ
(ブロック・モルタル)
はつり、破砕作業

結論から言うと、最大の違いは「回転するか、しないか」という点にあります。

ハンマドリルの特徴

「ハンマドリル」は、打撃に加えて「回転」の動きもできる工具です。ドリルビットを回転させながら打撃を加えることで、硬い石材を粉砕しながら掻き出し、穴を開ける(穿孔する)ことができます。

「それなら、両方できるハンマドリルの方が万能で良いのでは?」と思うかもしれませんね。確かに汎用性はハンマドリルの方が高いですが、純粋な「破壊力」や「耐久性」においては、はつり専用機であるハンマの方に圧倒的な分があります。長時間の解体作業がメインなら「ハンマ」、アンカー用の穴あけがメインでたまにはつりもしたいなら「ハンマドリル」、という選び方が基本になります。

電源コード式と充電式のメリット

電源コード式と充電式のメリット

かつて、解体用のハンマと言えば、太いキャブタイヤケーブルがついた「AC電源(コード式)」が当たり前でした。しかし、近年のバッテリー技術の進化、特にリチウムイオンバッテリーの高出力化により、実用的な「充電式(コードレス)」のハンマが登場し、現場の常識を大きく変えつつあります。

充電式のメリット

  • 圧倒的な機動力:足場の悪い場所や屋上でもコードを気にせず作業可能。
  • 準備の手軽さ:発電機や延長コードの用意が不要。
  • 環境性能:排気ガスが出ず、騒音も抑えられる。

特に株式会社マキタの「40Vmax」シリーズや、ミルウォーキーの「MX FUEL」などは、コード式に匹敵、あるいは凌駕するほどのハイパワーを実現しています。例えばマキタの充電式ハンマ HM002Gは、80Vmax(40Vmaxバッテリー2本差し)のハイパワーで、AC機と同等の破砕力を発揮します。

デメリットとしては、高容量バッテリーが高価であることと、連続作業時間が限られることです。はつり作業は電力消費が激しいため、本格的に使うなら予備バッテリーを複数用意し、充電しながらローテーションさせる運用が必須になります。

打撃力やシャンク形状などスペックの見方

打撃力やシャンク形状などスペックの見方

ハンマの性能比較をする際に注目すべきスペックがいくつかあります。カタログを見る時にまず確認してほしいのが「打撃エネルギー」です。これは「J(ジュール)」という単位で表され、数値が大きいほど一撃の破壊力が強くなります。

シャンク形状(軸の規格)に注意

購入時に最も注意が必要なのが「シャンク形状(軸形状)」です。これは先端ビットを取り付ける部分の規格のことで、ここが合わないとビットを取り付けることすらできません。

  • SDS-maxシャンク:直径18mmの軸に溝が入った形状。中型〜大型機の世界標準規格。ワンタッチで交換可能。
  • 六角シャンク(17mm):マキタなどの小型〜中型機で使われる日本独自規格。六角形の軸をストッパーで固定する。
  • 六角シャンク(21mm / 30mm):大型・強力なハンマ用。軸が太く頑丈。

「マキタのハンマを買ったけど、手持ちのハイコーキのビットが入らない!」というトラブルの大半は、このシャンク規格の不一致が原因です。特に「SDS-max」と「六角」は全く互換性がありません。購入の際は、本体がどのシャンクに対応しているかを必ず確認しましょう。

マキタやHiKOKIなど主要メーカー

マキタやHiKOKIなど主要メーカー

電動ハンマを選ぶ際、どのメーカーの製品を選ぶかも重要なポイントです。プロの現場で長年信頼されている主要なメーカーとその特徴をご紹介します。それぞれのメーカーに強みがあり、自分の作業スタイルに合ったブランドを選ぶことが大切です。

主要メーカーの特徴

株式会社マキタ(Makita)
国内シェアNo.1。充電式ラインナップの豊富さと、全国の営業所によるアフターサービスの良さが魅力。

工機ホールディングス(HiKOKI)
ACブラシレスモーター技術に定評があり、電圧降下に強く現場での信頼性が高い。

ボッシュ(Bosch)
SDSシャンクの開発元。コンクリート加工技術で世界をリードする。

ヒルティ(Hilti)
圧倒的な耐久性と破壊力を持つ「赤」のブランド。解体のプロフェッショナル御用達。

振動障害の予防とメンテナンス

振動障害の予防とメンテナンス

ハンマのような「振動工具」を使用する上で、絶対に避けて通れないのが「振動障害」のリスクです。ハンマが生み出す強力な振動は、コンクリートを砕くだけでなく、作業者の手や腕の血管、神経、関節にもダメージを与えます。

白蝋病(はくろうびょう)に注意

長時間、強い振動を受け続けると、血行不良やしびれを引き起こし、冷たい水に触れると指が白くなる「白蝋病」などの深刻な健康被害につながることがあります。一度発症すると完治が難しいため、予防が何よりも重要です。

DIYであっても、「手がジーンとする」「しびれる」と感じるほどの長時間作業は絶対に避けましょう。最近のモデルは、カウンターウェイトやバネを使った高度な防振機構(AVTなど)を搭載し、振動を大幅に低減しているもの(低振動モデル)が増えています。自分の体を守るためにも、数千円の価格差であれば、迷わずこうした安全機能付きの製品を選ぶことを強くおすすめします。また、JIS規格に適合した「防振手袋」の着用も効果的です。アトムの「しんげんくん」などは、ニトリルゴムのブロックが振動を吸収し、プロの現場でもよく使われています。

(出典:厚生労働省『チェーンソー以外の振動工具の取扱い業務に係る振動障害予防対策指針』)

メンテナンスの基本

定期的な「グリスアップ」が欠かせません。ハンマの内部では金属部品同士が高速で激しくぶつかり合っているため、潤滑油(グリス)が切れると摩擦熱で焼き付いたり、摩耗して故障したりします。メーカー指定の専用グリスを定期的に補充してください。

ハンマに関するよくある質問Q&A

ハンマに関するよくある質問Q&A
電動ハンマで穴あけ作業はできますか?

いいえ、できません。電動ハンマは「打撃」のみの動作を行う専用工具のため、ドリルビットを回転させる機能がありません。コンクリートに穴を開けたい場合は、「ハンマドリル」または小径であれば「振動ドリル」を使用してください。

ハンマのオイル(グリス)はどれくらいの頻度で補充すればいいですか?

使用頻度や機種によって異なりますが、一般的には月に1回程度、または毎日長時間使用する現場作業の場合は週に1回程度の確認・補充が推奨されています。オイル切れは故障の最大要因ですので、必ず取扱説明書に従って、メーカー指定の専用オイルやグリスを適量補充してください。

コンクリート以外のものを壊すのにも使えますか?

基本的にはコンクリート、石材、アスファルトの破砕用ですが、先端工具(ビット)を交換することで応用が利きます。例えば「スコップビット」を使えば固い粘土質の土を掘ることができますし、「ランマー」を使えば土の突き固めができます。「単管打ち込みアダプタ」を使えば杭打ちも可能です。ただし、木材の切断や金属の切断などには使用できません。

非常に音が大きいのですが、近隣への対策はどうすればいいですか?

電動ハンマの騒音は非常に大きく、近隣トラブルの原因になりやすいです。作業は平日通学・通勤後の日中(9時〜17時)に行い、早朝や夜間は避けるのがマナーです。可能であれば事前に近隣へ挨拶をし、「〇日の〇時〜〇時まで大きな音が出ます」と伝えておくだけでもトラブルのリスクを減らせます。また、防音シートで現場を囲うなどの対策も有効です。

まとめ:ハンマとは現場に必須の工具

まとめ:ハンマとは現場に必須の工具

今回は「ハンマとは」をテーマに、手工具から電動工具まで幅広く解説してきました。
たかがハンマーと思うかもしれませんが、手で扱うハンマー一つとっても、素材(鉄、ゴム、プラ)や形状(片手、両口、玄能)にこれほどの種類があり、それぞれに深い理由があることに驚かれた方もいるかもしれません。用途に合った適切なサイズや素材を選ぶことは、DIYの作品の仕上がりを良くするだけでなく、怪我を防ぐためにも非常に重要です。

また、電動工具としてのハンマは、コンクリートを砕くという人間の力では困難な重労働を、一手に引き受けてくれる頼もしい相棒です。よく似た「ハンマドリル」との違いを正しく理解し、現場環境や作業内容に合わせてコード式か充電式か、どのシャンク形状かを選ぶことが、快適で効率的な作業への第一歩となります。

「たかがハンマ、されどハンマ」。この記事が、皆さんの道具選びのヒントになり、より安全で楽しいDIYライフや現場作業の一助となれば嬉しいです。もし、具体的な機種選びで迷ったら、マキタやHiKOKI、ボッシュといった信頼できるメーカーのカタログを眺めてみるのも楽しいですよ。それぞれのメーカーのこだわりが見えてくるはずです。

記事の要点まとめ

  • ハンマは手工具と電動工具で意味が異なる多義的な用語である
  • 手工具は用途に合わせてヘッドの素材(鉄・ゴム・プラ)を使い分ける
  • 電動ハンマは「打撃のみ」で、穴あけができる「ハンマドリル」とは別物
  • 振動障害のリスクを知り、防振モデルや保護具を活用して安全に作業する
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